2014年08月18日

多発性硬化症とは(2)

●多発性硬化症の症状

MSは寛解と再発を繰り返す中枢神経系の炎症性脱髄を主として軸索変性を伴う疾患である。

MSは中枢神経系脱髄疾患のなかで最も多く、炎症、脱髄、グリオーシスを三主徴とし寛解、再燃、進行性の経過をとる。



突然健康な若年成人を主として侵す疾患であり、時に発症数週間から数ヶ月間疲労、脱力感、筋痛、関節痛がみられることもある。

発症は急激なこともあれば気が付かないまま進行していることもある。

初発時の発症様式は脳卒中のように数分から数時間で急激に発症する場合が20%ほどにみられる。

30%で1日から数日間かけて症状が進行し、さらに20%では数週から数ヶ月間かけて症状が進行する。



発症があきらかでないまま徐々に症状が進行し数ヶ月から数年にかけて慢性または間欠的に症状が進行するものもある(PPMS)。

発症の誘因としては何もないことが多いが誘因として過労、ストレス、感染などが上げられている。


また妊娠中は再発が少なく、出産後に再発することが多い。前駆症状がない場合が多いが、時に頭痛、発熱、感冒様症状、悪心、嘔吐などが10%程度に認められる。

また過呼吸や動作時などに急に構音障害や失調症、手足のしびれや痒みなど突発性発作が現れることがある。




MSの初発症状は脱髄病巣の部位によって多彩である。

神経学的所見では無症状であると考えられた部位にも異常が認められることがある。

実際に自覚症状が片側であっても、神経学的所見では両側に異常が認められることもある。



四肢のしびれは初期のMSでは50%ほどに認められる。

背下部の鋭い痛みは病変部位との関連は不明であるがよく認められる。


日本では視力低下が最も多く、上下肢の運動麻痺、四肢頸部体感などのしびれ感がこれにつぐ。


発症の状態は1〜3日で神経症状の完成する急性ないし亜急性が多い。

全経過中に出現する頻度は視力低下や視神経萎縮が多い。


MSでは中枢神経障害に基づく症候であればどんなものでも出現しうる。


欧米に比べると日本人では急性横断性脊髄障害の頻度が高く、逆に失調症や企図振戦の頻度は低い。

視神経炎が両側に起こり失明に至るような顕著な視力低下を呈する場合にはMSよりも視神経脊髄炎の可能性が高い。

MSと診断された後は多くの神経症症候が定期的に生じうる。

全身型のMSではおよそ半分くらいに視神経炎、脳幹、大脳、脊髄障害の症状や徴候が様々な程度呈してくる。

30〜40%位に四肢に深部異常感覚や脊髄性失調がおこる(脊髄型)。

小脳型または延髄橋小脳型は5%にくらいにしかみられない。


posted by ホーライ at 01:44| 中枢性脱髄疾患 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月30日

多発性硬化症とは?

●多発性硬化症とは

多発性硬化症(たはつせいこうかしょう、英: multiple sclerosis; MS)とは中枢性脱髄疾患の一つで、脳、脊髄、視神経などに病変が起こり、多様な神経症状が再発と寛解を繰り返す疾患である。

日本では特定疾患に認定されている指定難病である。




●多発性硬化症の疫学

中枢性脱髄疾患の中では患者が最も多い。

北米、北欧、オーストラリア南部では人口10万人当たり30〜80人ほど罹患しているが、アジアやアフリカでは人口10万人当たり4人以下で、人種によって罹患率に大きな差があることが特徴である。

南米、南欧、オーストラリア北部はその中間である。全体としては高緯度のほうが罹患率は高く、日本国内でも北海道と九州では北海道のほうが高い。

日本での有病率は増加してきており、10万人あたり8 - 9人、人口辺り約12,000人程度であることが2006年神経免疫班会議で報告されている。

罹患のピークは30歳頃であり、約80%が50歳までに発症する。また女性に多い。




●多発性硬化症の原因


さまざまな説が唱えられているが未だ原因は不明である。

このうち遺伝、自己免疫、ウイルスなどの感染の可能性が高いと思われている。


・遺伝

アジア・アフリカ系と欧米系で罹患率が大きく異なることから遺伝的要因が示唆されている。

罹患率の高い地域に住む先住民の罹患率が高いわけではないということは遺伝説を支持する要因だが、罹患率の少ないとされる日本人やアフリカ原住民でも、有病率の高い地域に移住した場合、その発病頻度が高くなることが知られている。

家族内での発症は決して高いわけではなく、複数の遺伝子が発症に関わると思われている。



・感染

再発と寛解を繰り返すという病態からウイルス感染が疑われている。

しかし、今まで報告されたウイルスは数多くあるものの、どれも特異的な関連ははっきり示されてはいない。



・自己免疫

根拠は不十分であるものの、免疫異常を疑わせる所見がいくつか見られる。

以下にその一例を示す。病巣の周囲にリンパ球やプラズマ細胞が集まっている

免疫グロブリンが沈着

サプレッサーT細胞が減少し、ヘルパーT細胞のTh1タイプが増加

免疫抑制剤が治療に有効


日本をはじめとするアジア地域では、視神経と脊髄を病変の主体とする比較的症状の重い視神経脊髄型多発性硬化症が多いとされてきたが、2004年に多くの視神経脊髄型多発性硬化症の血液中に特異的な自己抗体が存在することが発見された。

その後、この自己抗体はアクアポリン4(AQP4)という水チャンネルを認識することがわかり、容易に測定可能となった。

現在、視神経脊髄型多発性硬化症は欧米の視神経脊髄炎(Neuromyelitis optica)と同一病態と考えられている(下記項目も参照のこと)。




●多発性硬化症の分類

自然経過から多発性硬化症は再発寛解を繰り返す再発寛解型MS(RRMS:relapseing-remitting MS)と発症当初から慢性進行性の経過をたどる一次性進行型MS(PPMS:primary progressive MS)に大別される。

再発寛解型MS(RRMS)の約半数は発症後15〜20年の経過で再発がなくても次第に障害が進行するようになり二次性進行型MS(SPMS:secondary progressive MS)という名称となる。

再発は炎症過程を示しており進行は変性過程を示していると考えられている。

欧米白人ではRRMSが80〜90%でありPPMSが10〜20%を占めるが日本人ではPPMSは5%前後である。

RRMSとPPMSは治療に対する反応性の違いから異なる疾患とする立場と、長時間の自然経過の観察に基いてRRMSもPPMSも同じような年齢で同様な障害度に進行することから、1つの疾患の異なる表現型とする立場がある。

EDSSスコアで4に達するまでの期間(進行のスピード)は病型によって異なるがスコア4からスコア6に至る期間は病型は再発の有無に関係なく一定である。

スコア6にはPPMSでは49歳、RRMS/SPMSでは48歳であり、スコア8に達するのはともに58歳である。


posted by ホーライ at 03:09| 中枢性脱髄疾患 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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