頚髄が障害された場合には頸部を他動的に前屈させると肩から背中にかけて脊柱にそって下方へ放散する電気ショック様の痛み(電撃痛)がはしる。これをレルミット徴候という。
視神経炎
MSの25%に初期症状として球後性視神経炎がみられる。視力の低下、視野の異常、中心暗点が特徴的である。
複視
複視は眼筋麻痺で生じ、核間性眼筋麻痺または外転神経障害によって生じる眼球運動障害である。MSでは核間性眼球麻痺が両側性に生じるのが特徴である。このほかにMSでよくみとめられる注視麻痺には水平性注視麻痺、一眼半水平注視麻痺症候群(one and a half syndrome:水平性注視麻痺と同側の核間性眼筋麻痺)、後天性振子様眼振などがある。
急性脊髄炎(横断性脊髄炎)
MSの場合は脊髄炎は左右非対称に生じ、不完全であることが多い。急性脊髄炎のみがみられその他の脱髄性病変が示唆されたない場合には全身性エリテマトーデスや混合性結合組織病、抗リン脂質抗体症候群による可能性も考慮する、
四肢の筋力低下痙縮感覚障害小脳失調症
眼振、断綴性言語、企図振戦はシャルコーの三主徴として知られている。
膀胱直腸障害認知機能障害疲労
検査
MRI
2010年改訂McDonald診断基準においてMSの診断においてMRIの重要性がますます高まった。
診断目的の場合は造影MRIを加える事でより早期診断ができる可能性がある。
無症候性Gd増強病変と非造影病変が同時に認められた場合はは1回のMRIで時間的多発性(DIT:dissemination in time)の証明ができるようになった。
最初のMRIから時期を問わないフォローアップMRIにて新規T2延長病変またはGd増強病変を認めた場合もDITの証明が可能になった。
空間的多発性(DIS:dissemination in space)においてもMRIは重要な役割を果たす。
脳室周囲(periventricular)、皮質近傍(juxtacortical)、テント下(infratentorial)、脊髄(spinal cord)の4領域のうち2つ以上の領域においてそれぞれ1個以上のT2延長病変を認めれば空間的多発性を証明したことになる。
なお脳室周囲と皮質近傍に病変ができやすい。
MRIの撮影条件としてはテント上病変はT2WIよりもFLAIR画像の方が優れているが脳幹と基底核のMS病変はFLAIRよりもT2WIの方が優れている。
MSにおけるMEI上の病変のひとつにovoid lessionがあげられる。これは楕円形の病変であり脳室に対して垂直に存在しDawson's fingerと呼ばれる。
確認するにはFLAIR画像の矢状断が最も適している。
病巣の活動性の評価のためしばしば造影MRIが施行される。open ring signはMSに比較的特異的とされる。
MSの造影病変は4〜6週間持続するが数ヶ月持続することはなく、脳膿瘍や脳腫瘍との鑑別になる。
また造影病変はRRMSで多く見られPPMSでは少ない。T2WIで高信号を呈する病変の中にT1WIで低信号を示すものがありblack holeとよばれる。
視神経炎を疑うときに冠状断MRIで死亡抑制T2WIで高信号に視神経が描出されることがある。
視神経炎の活動性評価のために脂肪抑制GdT1WIを撮影することもある。MRSもよく用いられる。
またMSを疑うときは脳MRIだけではなく全脊髄MRIも撮影する。神経症状の増悪を認めなくとも定期的なMRI撮影が必要である。
画像上病変の増加が認められることがある。
注意するべきこととしてMRIで異常が認められなくともMSの再発は否定出来ない。
髄液検査でも異常が見られないこともあり、症状から再発が強く疑われたときは画像所見、髄液所見の結果に関係なくステロイドパルスを思考するべきという意見もある。