2014年07月09日

脊髄小脳変性症とは?(5)

●脊髄小脳変性症とは?(5)


●常染色体劣性脊髄小脳変性症

常染色体劣性遺伝性脊髄小脳変性症(ARCA)は常染色体劣性の遺伝形式をとり、進行性の運動失調を中核とする神経変性疾患を包括する概念である。

日本における脊髄小脳変性症の1.8%を占める。

欧米ではフリードライヒ運動失調症が大多数を占めるが、日本では眼球運動と低アルブミン血症を伴う早発型失調症(EAOH/AOA1)が最多である。

常染色体劣性遺伝を疑う時は以下の時である。

両親がいとこ婚または同胞に同症の発症がある、かつ累代発症(別の世代の発症)がないときに劣性遺伝を疑う。

また30歳未満の発症も劣性遺伝を疑う。

症候学的には、後根神経節、脊髄後索の変性を伴う脊髄型、小脳失調以外に多彩な神経症候(多くは軸索型感覚運動ニューロパチー)をともなう小脳型、小脳失調以外の神経症候を伴わない純粋小脳型に大別される。

脊髄型にはフリードライヒ運動失調症、ビタミンE単独欠乏を伴う失調症に代表され下肢に限局しない感覚性運動失調を呈する。



小脳型は毛細血管拡張運動失調症や眼球運動と低アルブミン血症を伴う早発型失調症が含まれる。

純粋小脳型は極めて稀である。DNA修復の破綻が複数の常染色体劣性脊髄小脳変性症の病態に関与していると考えられている。

またいくつかの疾患では早期治療が可能である。

代表例がビタミンE単独欠乏を伴う失調症(AVED)でありα-トコフェロールの内服で治療可能である。



●フリードライヒ運動失調症(FRDA)

1863年にフリードライヒが脊髄癆や多発性硬化症とは異なる同胞間にみられる遺伝性の脊髄性失調を呈する疾患を報告した。

日本での報告例は2009年現在ない。

欧米白色人種に強い創始者効果があり、5万人に1人と高頻度に認められる。

10歳前後が発症のピークであり罹患期間5〜50年と幅があるが30〜40歳で死亡することが多い。


●遺伝性痙性対麻痺

遺伝性痙性対麻痺(HSP)は緩徐進行性の下肢痙縮と筋力低下を主徴とする神経変性疾患群である。

痙性対麻痺のみをしめす純粋型と痙性対麻痺に加えて、小脳失調、ニューロパチー、脳梁の菲薄化、精神発達遅延、痙攣、難聴、網膜色素変性、魚鱗癬などの随伴症状を認める複合型に分かれる。

常染色体優性遺伝の場合は純粋型が多く、常染色体劣性遺伝や伴性劣性遺伝では複合型が多い。

分子遺伝学的にはSPG1〜56およびシャルルヴォア・サクネ型痙性失調症(ARSACA)などに分類される。



●シャルルヴォア・サクネ型痙性失調症(ARSACA)

伴性劣性遺伝の遺伝形式をとる小脳失調を伴う遺伝性痙性対麻痺である。

血族婚のある幼小児期発症の痙性失調であり頭部MRIで橋の線状のT2短縮病変や両側中小脳脚のT2短縮病変が認められた場合に疑われる。

原因遺伝子としてSACS遺伝子が知られている。

posted by ホーライ at 04:54| 神経・筋関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする