2014年06月26日

脊髄小脳変性症とは?(1)

●脊髄小脳変性症とは?(1)

脊髄小脳変性症(せきずいしょうのうへんせいしょう、英:Spinocerebellar Degeneration (SCD))は、運動失調を主な症状とする神経疾患の総称である。

小脳および脳幹から脊髄にかけての神経細胞が徐々に破壊、消失していく病気であり、1976年10月1日以降、特定疾患に16番目の疾患として認定されている。

また、介護保険における特定疾病でもある。



●脊髄小脳変性症の概要

1863年フリードライヒにより梅毒感染による脊髄癆より分離されるかたちでフリードライヒ運動失調症が記載されることで確立した疾患概念である。

1986年の調査では10万人に5〜10人の割合で発症すると推定されている。

2000年現在で日本では2万人弱の患者がいると考えられている。

日本では遺伝性が30%であり、非遺伝性が70%である。

欧米と異なり遺伝性のSCAは大部分が優性遺伝である。

主に中年以降に発症するケースが多いが、若年期に発症することもある。

非常にゆっくりと症状が進行していくのが特徴。

10年、20年単位で徐々に進行することが多い。

だが、進行の速度には個人差があり、進行の早い人もいる。

遺伝性のものは孤発性よりも若年発症が多いが、DRPLAを除き孤発性よりも予後はよいとされている。



●脊髄小脳変性症の分類

●孤発性

非遺伝性(孤発性)脊髄小脳変性症は大きく多系統萎縮症(MSA)と孤発型皮質小脳変性症(CCA)およびその他の症候性小脳変性症に分類される。

多系統萎縮症はかつてはオリープ橋小脳変性症(OPCA)、線条体黒質変性症(SND)、シャイドレーガー症候群(SDS)と呼ぼれていたものであるが、患者のグリア細胞内にGCIという嗜銀性封入体が共通して認められたため疾患概念が統一された。


●孤発性皮質性小脳変性症(皮質性小脳萎縮症 CCA)

皮質性小脳萎縮症(CCA)は成人発症、孤発性脊髄小脳変性症の一病型であり純粋小脳失調症をしめす。

単一疾患としては未確立であり病因的にはheterogeneousな症候群である。

1922年にMarrieらの報告がCCAのはじまりである。

病理像はほぼ小脳皮質に限局する萎縮、全般性のプルキンエ細胞変性脱落、グリオーシスを主徴とする。

これに下オリーブ核の変性や分子層、顆粒層の変性が加わることもある。当初は病理学的確立し、対極に位置したのがオリーブ橋小脳変性症であり多系統萎縮症であった。特にMSA-Cは初期はCCAと鑑別が困難な場合もある。CCAは孤発性であるが非遺伝性とは限らず、CCA症例にSCA6やSCA31といった遺伝性脊髄小脳変性症の遺伝子変異が見出されることがある。今後もCCAから新たな遺伝子変異が見出される可能性がある。CCAは除外診断で行うのが原則である。まずは詳細な病歴、生活歴、家族歴の聴取を行う。画像診断では腫瘍性疾患に加え先天性奇形などの構造的疾患を除外する。中毒性、代謝性疾患、傍腫瘍性神経症候群や抗GAD抗体による免疫介在性小脳症候群を除外する、そしてMSAを除外するとい流れになる。発症から4年以内に小脳外症状を示さない場合はMSAの可能性は低いと考えられる。



●症候性皮質小脳変性症

症候性の小脳変性症の原因としては、アルコール性、薬剤性(フェニトインなど抗癲癇薬、リチウム、抗うつ薬、5-FUなど)、中毒性(有機水銀、鉛、農薬、溶剤など)、内分泌性(甲状腺機能低下症)、傍腫瘍性小脳変性症、感染症後遺症(急性小脳炎)、ビタミン欠乏症(ビタミンE、B12)、免疫介在性(抗GAD抗体、セリアック病)などが知られている。


●多系統萎縮症(MSA)

多系統萎縮症はオリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性症、Shy-Drager症候群を包括する概念として1969年にGrahamやOppenheimerらによって提唱された。

1989年に米国のPappらがMSAでは臨床病型に関係なく100%の例でオリゴデンドログリアに嗜銀性封入体が出現することを報告し疾患概念として確立した。

この封入体がグリア細胞質内封入体(GCI)と呼ばれMSAに特異的な封入体である。

1998年にはGCIがα-シヌクレイン陽性となることが報告され、MSAはパーキンソン病やレビー小体病とともにαシヌクレノパチーという新たな疾患概念を形成することになった。


2008年に第二回コンセンサス会議が行われ診断基準が改定された。

Gilmanらによって提唱された診断基準では臨床病型は小脳失調の強いMSA-Cとパーキンソン症候群が強いMSA-Pに分かれるが、これは患者の評価時点での主症状を示すだけある。


また発症はパーキンソン症状または小脳運動障害、あるいは疑い例の基準で定義された自律神経症状を自覚した時とされている。



MSA-CとMSA-Pの相対的頻度は地域や人種の違いによって異なる可能性がある。

ヨーロッパではMSA-Pが多いが日本ではMSA-Cが多い。

神経病理学ではMSA-Cでは下オリーブ核、橋核、小脳皮質(プルキンエ細胞)にMSA-Pでは被殻の背外側部と黒質に高度の神経細胞脱落とグリオーシスが認められる。

さらに自律神経系(視床下部、迷走神経背側核、脊髄中間質外側核、脊髄オヌフ核)にも神経脱落が認められる。



突然死の責任病巣としては延髄のセロトニンニューロンの脱落が指摘されている。

しかし、これらの系統が単独で障害される例が存在せず、実際にはオリーブ橋小脳系、線条体黒質系、自律神経系の3系統が様々な程度と組み合わせで障害される。

どの系統が最も早期から障害されるかによって臨床的病型が決定される。

運動ニューロン系(大脳運動野、錐体路、脊髄前角)もMSAの病変部位となる。

また前頭葉、側頭葉の萎縮、大脳白質広範変性などが認められる場合もある。

グリア細胞内封入体(GCI)はオリゴデンドログリアに認められMSAの病理診断では必須である。


GCIはHE染色では淡いピンク色であり見落としやすいがガリアス染色またはαシヌクレイン免疫染色を用いると明瞭に検出できる。

GCIは異常フィラメントが集簇した構造物である。

GCIは中枢神経系に広範に分布し、特に神経細胞脱落を呈する神経核ならびにその投射線維に多い。

GCIが多く認められる部位としては線条体とその周囲の白質、橋底部とそれに連続する白質、大脳運動野とその皮質下白質などである。



MSAではオリーブ橋小脳系でも線条体黒質でも線条体黒質系でもGCIの出現数と神経脱落の程度は相関している。

MSAにおけるもっとも早期の変化はオリゴデンドログリアにおけるαシヌクレインの蓄積、凝集でありその後、ミエリン、軸索の変性を経て神経細胞死と向かうと考えられている。

GCIは脳広範に出現し、広範にオリゴデンドログリアが障害されることでMSAの多系統の障害は説明される。


GCIを含むオリゴデンドログリアでは核内にも点状ないし線状の封入体、GNIが認められることもある、また神経細胞質内封入体であるNCI、神経細胞核内封入体NNIや神経突起内にneuropil threadsなど知られている。

GCI、GNI、NCI、NNI、neuropil threadsという5種類の構造物が知られている。

GCIの増加と広がりに伴いNCIも増加しやがて神経細胞脱落が認められる。



パーキンソン病とMSAでは蓄積するαシヌクレインの化学的構造は同一と考えられている。

パーキンソン病ではレビー小体の形成過程が観察されるがMSAのGCIは形成過程が観察されない。

パーキンソン病ではグリア内蓄積はあるが核内蓄積は認められないがMSAではGNIなど核内蓄積がある。

αシヌクレイン遺伝子の異常はパーキンソン病は起こすがMSAは起こさないといった違いが認められる。


(続く)
posted by ホーライ at 06:48| 神経・筋関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。