2014年07月30日

難病助成 100余の病気を先行指定へ

●難病助成 100余の病気を先行指定へ

難病の医療費の助成制度が見直され、来年から対象が大幅に増えますが、厚生労働省の専門家会議はALS=筋萎縮性側索硬化症など100余りの病気

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140728/k10013350891000.html



●指定難病の検討の進め方について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000052380.pdf



●指定難病検討委が初会合、8月中に1次選定へ  医療費助成の対象疾患は「18万人未満」
http://www.advance-news.co.jp/news/2014/07/post-1226.html



●難病の患者に対する医療等に関する法律施行令(案)に関する御意見の募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495140142


posted by ホーライ at 03:23| 難病・特定疾患のニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

多発性硬化症とは?

●多発性硬化症とは

多発性硬化症(たはつせいこうかしょう、英: multiple sclerosis; MS)とは中枢性脱髄疾患の一つで、脳、脊髄、視神経などに病変が起こり、多様な神経症状が再発と寛解を繰り返す疾患である。

日本では特定疾患に認定されている指定難病である。




●多発性硬化症の疫学

中枢性脱髄疾患の中では患者が最も多い。

北米、北欧、オーストラリア南部では人口10万人当たり30〜80人ほど罹患しているが、アジアやアフリカでは人口10万人当たり4人以下で、人種によって罹患率に大きな差があることが特徴である。

南米、南欧、オーストラリア北部はその中間である。全体としては高緯度のほうが罹患率は高く、日本国内でも北海道と九州では北海道のほうが高い。

日本での有病率は増加してきており、10万人あたり8 - 9人、人口辺り約12,000人程度であることが2006年神経免疫班会議で報告されている。

罹患のピークは30歳頃であり、約80%が50歳までに発症する。また女性に多い。




●多発性硬化症の原因


さまざまな説が唱えられているが未だ原因は不明である。

このうち遺伝、自己免疫、ウイルスなどの感染の可能性が高いと思われている。


・遺伝

アジア・アフリカ系と欧米系で罹患率が大きく異なることから遺伝的要因が示唆されている。

罹患率の高い地域に住む先住民の罹患率が高いわけではないということは遺伝説を支持する要因だが、罹患率の少ないとされる日本人やアフリカ原住民でも、有病率の高い地域に移住した場合、その発病頻度が高くなることが知られている。

家族内での発症は決して高いわけではなく、複数の遺伝子が発症に関わると思われている。



・感染

再発と寛解を繰り返すという病態からウイルス感染が疑われている。

しかし、今まで報告されたウイルスは数多くあるものの、どれも特異的な関連ははっきり示されてはいない。



・自己免疫

根拠は不十分であるものの、免疫異常を疑わせる所見がいくつか見られる。

以下にその一例を示す。病巣の周囲にリンパ球やプラズマ細胞が集まっている

免疫グロブリンが沈着

サプレッサーT細胞が減少し、ヘルパーT細胞のTh1タイプが増加

免疫抑制剤が治療に有効


日本をはじめとするアジア地域では、視神経と脊髄を病変の主体とする比較的症状の重い視神経脊髄型多発性硬化症が多いとされてきたが、2004年に多くの視神経脊髄型多発性硬化症の血液中に特異的な自己抗体が存在することが発見された。

その後、この自己抗体はアクアポリン4(AQP4)という水チャンネルを認識することがわかり、容易に測定可能となった。

現在、視神経脊髄型多発性硬化症は欧米の視神経脊髄炎(Neuromyelitis optica)と同一病態と考えられている(下記項目も参照のこと)。




●多発性硬化症の分類

自然経過から多発性硬化症は再発寛解を繰り返す再発寛解型MS(RRMS:relapseing-remitting MS)と発症当初から慢性進行性の経過をたどる一次性進行型MS(PPMS:primary progressive MS)に大別される。

再発寛解型MS(RRMS)の約半数は発症後15〜20年の経過で再発がなくても次第に障害が進行するようになり二次性進行型MS(SPMS:secondary progressive MS)という名称となる。

再発は炎症過程を示しており進行は変性過程を示していると考えられている。

欧米白人ではRRMSが80〜90%でありPPMSが10〜20%を占めるが日本人ではPPMSは5%前後である。

RRMSとPPMSは治療に対する反応性の違いから異なる疾患とする立場と、長時間の自然経過の観察に基いてRRMSもPPMSも同じような年齢で同様な障害度に進行することから、1つの疾患の異なる表現型とする立場がある。

EDSSスコアで4に達するまでの期間(進行のスピード)は病型によって異なるがスコア4からスコア6に至る期間は病型は再発の有無に関係なく一定である。

スコア6にはPPMSでは49歳、RRMS/SPMSでは48歳であり、スコア8に達するのはともに58歳である。


posted by ホーライ at 03:09| 中枢性脱髄疾患 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月25日

もやもや病について(2)

本疾患は原則両側性に起こるが、その程度は様々である。

一方の内頸動脈の狭窄は重度であるがもう一方は極めて軽度であるということもある。

以下に小児と成人の初発症状で多いものを示す。



●小児例

反復性の頭痛

脱力発作

痙攣

失神



●成人例

脳出血

片麻痺

頭痛

意識障害



●もやもや病の合併症

小児例では知能障害、成人例では脳出血



●もやもや病の原因

原因となる感受性遺伝子はRNF213遺伝子の多型p.R4810Kである。

(感受性遺伝子とは疾患への感受性を高める遺伝子をいい、遺伝子異常だけで起こる原因遺伝子とは区別される。)


RNF213をクローニングしたゲノムは591-kDaの細胞質に存在するタンパクをコードしており、ゼブラフィッシュによって発達期にこの遺伝子の発現を抑制すると、頭蓋内の眼動脈や脊椎動脈の分岐の異常が出ることから、血管形成に重要な新たな遺伝子であることも分かった。

また、この遺伝子を持っている人が全て発症するわけでなく、環境要因の関与も疑われている。

さらにp.R4810Kは推定1万5千年の中国、韓国、日本共通の祖先にまでにさかのぼることも分かり、東アジアの歴史の中で広がっていった遺伝子であることも分かった。


(特定までの流れ)

2008年 15家系を用いた研究で、17番染色体の長腕の終末部領域に100個以上の遺伝子が存在することを見出し報告された。

2010年 17番染色体の長腕の終末部領域の遺伝子「Raptor」を道しるべとして原因遺伝子が検索できることが報告された。

2011年 17番染色体の候補領域にあるRNF213という遺伝子の4810番目のアルギニンがリジンに代わる多型(p.R4810K)が機能異常に結びつく多型と結論づけられた。




●もやもや病の統計

年間発症率は10万人あたり0.35-0.5人と推定されている。

日本では年間約400-500人程度の新患の登録があり、常に約4000人の患者がいる。

男女比は1:1.7、好発年齢は5歳と30〜40歳の2峰性を示す。

小児では脳虚血症状が多いのに対して成人では出血発症が多い。

約15%に家族歴があるとされている。




●もやもや病の疫学

原因遺伝子のp.R4810kは、およそ1万5000年前のアジア大陸における祖先においてもやもや病感受性変異が起きたとされ、アジア、特に中国、韓国、日本人に多く確認されている疾患であり、中でも日本が最も患者数が多い。

欧米・白人集団では原因となるp.R4810Kが確認されないことから発生頻度が極めて少ない。



一次予防

DNA型鑑定により早急に手術適応のある症例かどうかを判断する指標(遺伝子マーカー)の有無を調べることが最も有効とされている。

遺伝子マーカーは現在解明されているものでR213遺伝子の多型であるc.14576G>Aがある。

この多型を所持する場合のもやもや病発生リスクは通常の259倍である。

さらにこの多型はもやもや病の発生時期も予測しうる遺伝子マーカーである。

c.14576G>Aがホモ接合体の場合の予測発症時期は3歳前後、ヘテロ接合体の場合は7歳前後、そのどちらでもない野生型の場合は8歳前後となっている。

(ホモ接合型:父母由来のそれぞれの遺伝子座の両方に同じ変異がある状態。ヘテロ接合型:父母由来の遺伝子座のどちらか一方にのみ変異がある状態。野生型:正常な(本来の)機能を有するもの。詳しくは対立遺伝子の項目)



二次予防

片頭痛や癲癇として見逃されている例が多いため、繰り返す頭痛や痙攣発作がある場合はもやもや病を疑い、MRIやMRAと合わせてDNA型鑑定を受ける。



三次予防

激しい運動は脳虚血や脳出血を誘発する恐れがあるため、極力避けるようにする。




●もやもや病の診断

原則は脳血管撮影で診断するが、MRI並びにMRAできちんと診断基準を満たせば、必ずしも脳血管撮影は必要としない。

ただし病期が初期であった場合には、MRAでは確認が難しいことが多いので注意を要する。


●もやもや病の治療

内科的治療(薬物治療など)ではこれまで有効とされてきた治療法はない。

ただし虚血例に対しては抗血小板療法、出血例では高血圧治療などが行われる。

外科的治療に関しては、一過性脳虚血発作例に対して脳血行再建術を行う。

これには直接的にバイパスを作る術式(浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術が一般的)と、間接的にバイパスを作る術式(脳表に筋膜や翻転した硬膜、骨膜などを敷きこんで血管新生を期待する)、並びに両者を併用する術式がある。

一方、成人に多い出血発症例に対して脳血行再建術を行うかどうかは、現在日本でJapan Adult Moyamoya Trial (JAM trial)が進行中であり、この結果が待たれる。


●もやもや病の予後

小児例での急速進行例では、重篤な知能障害が後遺症として残ることが多い。

成人例では、脳出血を起こした後に再出血し死亡率が高い。


以上

posted by ホーライ at 01:07| 脳に関する病気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月24日

もやもや病について

●もやもや病

もやもや病(もやもやびょう、英称:moyamoya disease)は、脳底部に異常血管網がみられる脳血管障害。

脳血管造影の画像において、異常血管網が煙草の煙のようにモヤモヤして見えることから、日本人研究者の鈴木二郎と高久晃の研究論文 Cerebrovascular "Moyamoya" Disease: Disease Showing Abnormal Net-Like Vessels in Base of Brain: Jiro Suzuki, Akira Takaku; Arch Neurol. 1969; 20(3): 288-299. により「もやもや病」と命名された。

これまで、厚生労働省の正式な疾患呼称は、ウィリス動脈輪閉塞症(ウィリスどうみゃくりんへいそくしょう)であったが、2003年から厚生省難病研究班の正式名称ももやもや病となり、もやもや病という病名が正式なものとして認証された。





●もやもや病の定義

もやもや病の本質的な病態は、内頸動脈終末部の進行性狭窄・閉塞である。

もやもや血管は主幹動脈の閉塞により代償的に穿通枝などが異常に拡張した側副血行路である。

診断基準によれば脳血管造影で以下の所見を呈するものをいう。

頭蓋内内頸動脈終末部、前・中大脳動脈近位部に狭窄または閉塞がある狭窄または閉塞部分付近に異常血管網が発達している

このような現象が両側性に見られる




●もやもや病の症状・病態

脳の動脈に狭窄があると、当該血管支配領域の脳は血液不足(虚血)に陥る。

そこで代償的に新たな血管(もやもや血管)が構築される。

しかしこれらの血管は細く、脳虚血・または脳出血に起因する種々の発作の原因となる。



虚血の発作は過換気が原因で起こる。

過換気状態になると血液中の二酸化炭素分圧が低下する。

二酸化炭素は血管を拡張させる働きがあるので、これが減少すると血管が収縮する。

すると、元々細い異常血管網(もやもや血管)はさらに収縮を起こして脳に送るべき酸素の供給が不足する状態になる。

こうして失神や脱力発作が起こる。典型的な過換気状態は、熱い蕎麦やラーメンなどを冷ます「吹き冷まし」行為や、啼泣、リコーダーやピアニカなどの吹奏楽器演奏時など、必要以上の呼吸を伴う動作で発生するため、注意を要する。


また、成人発症例では動脈硬化が関与して狭窄を引き起こすものと考えられている。


一方出血の発作は、脳の血液需要に応じるための大量の血液を送る血管(もやもや血管)が細いために破綻するものと考えられている。

成人発症例に多い。



出血箇所が悪い場合、致命傷となる。

また、成人に近い成長期に出血すると脳全体に脳浮腫(加速的な腫れ)を発症し、多くの場合、助からない。

最も留意すべきは補助的に作られた即席・もやもや血管は壁が薄く破れやすい所にある。

本疾患は原則両側性に起こるが、その程度は様々である。

一方の内頸動脈の狭窄は重度であるがもう一方は極めて軽度であるということもある。

posted by ホーライ at 00:29| 脳に関する病気 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月18日

脊髄小脳変性症とは?(7)

●脊髄小脳変性症とは?(7)


●脊髄小脳変性症の治療法

分子病態の解明にもかかわらず脊髄小脳変性症のほとんどの疾患は根治的な治療法が確立されていない。

症状の緩和としていくつかの治療が知られている。


薬物療法

運動失調に対する治療

TRH製剤である酒石酸プロチレリン(ヒルトニン)やTRH誘導体(アナログ)であるタルチレリン水和物(セレジスト)が脊髄小脳変性症の運動失調に認可されている。

酒石酸プロチレリンもタルチレリン水和物も二重盲検比較試験で運動失調に対する有用性が確認されている。

しかし酒石酸プロチレリンの正確な分子病態は解明されていない。

α1Aカルシウムチャネル遺伝子異常によって生じた小脳失調マウスでの研究では、小脳のノルアドレナリンの代謝回転促進作用や間脳、脳幹、小脳で低下したグルコース代謝の正常化作用が関与していると報告されている。


これらの薬物はTSH分泌反応が低下する恐れがあるため甲状腺ホルモン値の確認が必要である。

酒石酸プロチレリンは0.5〜2.0mgを筋肉内注射か生理食塩水で5〜10mlに希釈して静脈内注射する。

これを1日1回14日間施行し、14日間の休薬が1クールとなる。

10日間以上投与すると効果がでるとされている。

また3日投与、3日休薬で1クールとする方法も6ヶ月以上継続すると有効とされている。

その他の効果が期待される薬物としてはプレガバリン、ガバペンチン、リルゾールなど多数が知られている。

磁気刺激療法がSCA6など小脳失調型脊髄小脳変性症の改善に有効という報告もある。



パーキンソン症候群に対する治療

振戦や筋固縮の対症療法に使われる。

また脳内に電極を埋め込み、電気刺激を与えるパーキンソン病への治療法が、SCD患者の振戦にも同じ効果があるとして振戦のひどい患者に対して手術が行われる場合もある。


自律神経超節薬

代表的なものとして、起立性低血圧の対症療法にジヒドロエルゴタミンやドプスなどが使われる。



鎮痙薬

筋弛緩薬などが用いられることもある。




●脊髄小脳変性症の原因と予後

遺伝性のものは、近年、原因となる遺伝子が次々と発見されており、それぞれの疾患とその特徴もわかりつつある。

常染色体優性遺伝のもので最も多く見られるのは、シトシン・アデニン・グアニンの3つの塩基が繰り返されるCAGリピートの異常伸長であることが判明した。

CAGはグルタミンを翻訳・発現させるRNAコードだが、正常な人はこのCAGリピートが30以下なのに対し、この病気の患者は50〜100に増加している。

CAGリピートの数が多ければ多いほど、若いうちに発症し、症状も重くなることが分かりつつある。

この異常伸長により、脳神経細胞がアポトーシスに陥ることが近年の研究で分かりつつある。



孤発性の多系統萎縮症に関しても、オリゴデンドログリアや神経細胞内に異常な封入体が存在することが分かっていたが、その主成分が、パーキンソン病患者の脳細胞に見られるレビー小体の構成成分でもあるα -シヌクレインというたんぱく質の一種であることが判明した。

現在はその蓄積システムの研究が両疾患の研究スタッフの間で進められている。



だが、具体的な原因が完全にわかるまでには相当な時間がかかることが予想される。

また、現段階で根本的な治療法が確立されているのはビタミンE単独欠乏失調症のみであり、他の疾患に関しては薬物療法やリハビリテーションといった対症療法で進行を抑えるしかないのが現状である。



運動神経の変性によって転倒の危険が増すため、リハビリ、特に手足腰の筋肉を鍛えることで大きなけがを防ぐ事に繋がるので、ウォーキングや筋力トレーニングは毎日かかさない方が体がスムーズに動かせる。


病気の進行は緩慢であるため、10年、20年と長いスパンで予後を見ていく必要があり、障害が進行するにしたがって介護が必要になるケースも出てくる。

遺伝子検査を行って、遺伝性か否かを判定するには、採血による遺伝子検査方法によって2週間ほどで判定できる。

しかし、発病前の遺伝子検査、また親が検査を受けることによって遺伝性が判明した場合、子供達に遺伝病のキャリアであることを宣告することになるので慎重な対応が求められる。




●社会的影響

この病気を患った木藤亜也の日記を本にした『1リットルの涙』が2006年に210万部の売り上げを誇るヒットとなった。

また、同作品は映画化(大西麻恵主演)、テレビドラマ化(沢尻エリカ主演)されている。


以上


posted by ホーライ at 04:58| 神経・筋関係 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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